「住宅ローン控除(住宅ローン減税)」の内容は知っていても、自分がどのくらいの減税を受けられるのか?計算方法を十分に理解している方は、少ないはずです。今回は、住宅ローン控除(住宅ローン減税)の計算方法の全手順とシミュレーション方法をわかりやすく解説します。
住宅ローン控除(住宅ローン減税)の計算方法
住宅ローン控除(住宅ローン減税)の基本的な考え方は
という形の仕組みとなっています。
と思ってしまいますが、実は、ここからが複雑なのです。
複雑なポイントその1.控除額に上限がある
前述した計算だけなら、1億円の住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合
- 控除額(減税額) = 住宅ローン残高:1億円 × 控除率:1.0% = 100万円
となりますが、実はこうはならないのです。
住宅ローン控除(住宅ローン減税)には「上限」が設定されているからです。
住宅ローン控除(住宅ローン減税)の概要
対象物件 | 一般住宅 | 認定住宅 |
---|---|---|
居住年 | 平成26年4月~33年12月 | 平成26年4月~33年12月 |
年末残高の上限 | 4,000万円 | 5,000万円 |
控除率 | 1.0% | 1.0% |
控除期間 | 10年 | 10年 |
所得税控除上限/年 | 40万円 | 50万円 |
住民税控除上限/年 | 13.65万円/前年課税所得×7% | 13.65万円/前年課税所得×7% |
主な利用条件 | 10年以上の住宅ローンを組むこと 床面積50㎡以上 中古住宅の場合は耐震基準に適合すること |
10年以上の住宅ローンを組むこと 床面積50㎡以上 認定長期優良住宅・認定低炭素住宅であること |
認定住宅であれば控除額の上限が50万円
ですので、
1億円の住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合は
- 控除額(減税額) = 住宅ローン残高:1億円 × 控除率:1.0% = 100万円
ではなく、40万円
8000万円の住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合は
- 控除額(減税額) = 住宅ローン残高:8000万円 × 控除率:1.0% = 80万円
ではなく、40万円
4000万円の住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合は
- 控除額(減税額) = 住宅ローン残高:4000万円 × 控除率:1.0% = 40万円
という計算になります。
複雑なポイントその2.所得税と住民税から控除されるのにも、限界がある
前述した通りで
認定住宅であれば控除額の上限が50万円
ですので、40万円所得税から控除されるといっても、その年の所得税がそもそも、40万円に満たない(控除額が全額使い切れない)ケースがあります。
所得税の税率
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
所得税の計算
で計算されます。
計算例
年収300万円の方の所得税シミュレーション
年収:300万円
社会保険料:44万円
基礎控除:38万円
①課税される所得金額 = 年収- 給与所得控除- 所得控除
給与所得控除
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) |
給与所得控除額 |
---|---|
1,800,000円以下 | 収入金額×40% 650,000円に満たない場合には650,000円 |
1,800,000円超3,600,000円以下 | 収入金額×30%+180,000円 |
3,600,000円超6,600,000円以下 | 収入金額×20%+540,000円 |
6,600,000円超10,000,000円以下 | 収入金額×10%+1,200,000円 |
10,000,000円超 | 2,200,000円(上限) |
所得金額 = 年収:300万円 - 給与所得控除(収入金額×30%+180,000円) - 所得控除(44万円+38万円)= 110万円
②所得税 = 課税される所得金額 × 税率 - 控除額
所得税 = 課税される所得金額:110万円 × 税率:5% - 控除額:0円 = 55,000円
年収600万円の方の所得税シミュレーション
年収:600万円
社会保険料:85万円
基礎控除:38万円
①課税される所得金額 = 年収- 給与所得控除- 所得控除
所得金額 = 年収:600万円 - 給与所得控除(収入金額×20%+540,000円) - 所得控除(85万円+38万円)= 303万円
②所得税 = 課税される所得金額 × 税率 - 控除額
所得税 = 課税される所得金額:303万円 × 税率:10% - 控除額:97,500円 = 205,000円
となるのです。
つまり、社会保険料や控除によって変動しますが、モデルケースの場合
- 年収300万円 → 所得税:55,000円
- 年収600万円 → 所得税:205,000円
ですから、一般住宅の控除額の上限40万円よりも、全然支払うべき所得税の方が少ないのです。
という方が多く出てしまうので、
住民税の計算
住民税 = 課税される所得金額 × 税率
住民税の税率:10%(市民税:6%+県民税:4%)
前述した例では
年収300万円の方の所得税シミュレーション
住民税 = 所得金額:110万円 × 税率:10%= 110,000円
年収600万円の方の所得税シミュレーション
住民税 = 所得金額:303万円 × 税率:10%= 303,000円
となります。
しかし、ここで注意しなければならないのは
ということです。
です。
前述した計算例で住宅ローン年末残高4000万円超の場合
年収300万円の方
住宅ローン控除(住宅ローン減税)額:40万円
所得税:55,000円
住民税:110,000円(上限13.65万円までが控除)
所得税も、住民税も、0円になるが・・控除枠の40万円は使い切れない(23.5万円余る)
年収600万円の方
住宅ローン控除(住宅ローン減税)額:40万円
所得税:205,000円
住民税:303,000円(13.65万円以下、前年課税所得×7%以下)
所得税 20.5万円 → 0円(40万円 - 20.5万円 = 19.5万円の枠が余る)
住民税 30.3万円 → 16.65万円(19.5万円 - 13.65万円 = 5.85万円の枠が余る)
複雑なポイントその3.住宅ローン残高は毎年少なくなっていく</3>
住宅ローン控除(住宅ローン減税)は
ものです。
住宅ローンの年末残高というのは、返済していけば必ず減っていくものです。
計算例:4200万円の住宅ローンを金利1.0%、返済期間35年で返済した場合
住宅ローン返済 | 年末残高 | 控除率 | 控除額 |
---|---|---|---|
1年目 | 39,975,225円 | 1.0% | 399,752円 |
2年目 | 38,947,556円 | 1.0% | 389,476円 |
3年目 | 37,909,563円 | 1.0% | 379,096円 |
4年目 | 36,861,142円 | 1.0% | 368,611円 |
5年目 | 35,802,189円 | 1.0% | 358,022円 |
6年目 | 34,732,597円 | 1.0% | 347,326円 |
7年目 | 33,652,260円 | 1.0% | 336,523円 |
8年目 | 32,561,071円 | 1.0% | 325,611円 |
9年目 | 31,458,919円 | 1.0% | 314,589円 |
10年目 | 30,345,695円 | 1.0% | 303,457円 |
まとめ
住宅ローン控除(住宅ローン減税)の計算の仕組みは
- 控除額(減税額) = 住宅ローンの年末残高 × 控除率:1.0%
- 所得税と住民税から、控除額(減税額)分、減税される
- この控除(減税)が10年間継続する
というシンプルな仕組みですが・・・
- ポイントその1.控除額に上限がある
- ポイントその2.所得税と住民税から控除されるのにも、限界がある
- ポイントその3.住宅ローン残高は毎年少なくなっていく
ため、複雑な計算方法が必要になってくるのです。
住宅ローン控除(住宅ローン減税)のイメージ図
住宅ローン控除(住宅ローン減税)のシミュレーション例
住宅ローン控除(住宅ローン減税)の簡単なシミュレーション方法
手順その1.シミュレーションページに行く
手順その2.住宅ローンの条件を入力する
借り入れ条件を入力します。
今回の入力条件
- 借入額:4500万円
- 返済期間:35年
- 返済方法:元利均等返済
- ボーナス返済:0円
- 住宅ローン借入開始年月:2018年8月
金利を入力します。
今回の入力条件
- 金利:1.0%
- 変動なし
住宅ローン控除居住年度を入力します。※「いつ入居しはじめたか?」です。
「シミュレーション実行」ボタンを押します。
手順その3.10年間の住宅ローン控除額を確認する
住宅ローン返済シミュレーション結果には「住宅ローン控除額」が表示されます。
年 | 元金残高 | 最大控除・減税額 |
---|---|---|
2018年 | 44,551,611 | 400,000 |
2019年 | 43,467,827 | 400,000 |
2020年 | 42,373,156 | 400,000 |
2023年 | 41,267,486 | 400,000 |
2023年 | 40,150,709 | 400,000 |
2023年 | 39,022,712 | 390,227 |
2024年 | 37,883,385 | 378,833 |
2025年 | 36,732,613 | 367,326 |
2026年 | 35,570,279 | 355,702 |
2027年 | 34,396,268 | 343,962 |
合計:3,836,050円
手順その4.自分の「所得税」「住民税」を確認する
「所得税」の確認方法
会社員の方
「源泉徴収票」で確認できます。
になります。
個人事業主や会社役員、2カ所以上の収入がある方
「確定申告書」で確認できます。
になります。
「住民税」の確認方法
になります。
会社員の方
「源泉徴収票」で確認できます。
課税所得は、「6」番の「給与所得控除後の金額」から「7」番の「所得控除の額の合計」を引いたものです。
これに10%を掛ければ住民税額です。
個人事業主や会社役員、2カ所以上の収入がある方
「確定申告書」で確認できます。
「26」番の「課税される所得金額」が課税所得です。
これに10%を掛ければ住民税額です。
手順その5.上限を考慮して、自分が使える住宅ローン控除額を計算する
で計算できます。
前述の方法で計算できるのは、「源泉徴収票」「確定申告書」の年収での計算になるので、将来の住宅ローン控除額が正確にわかるわけではありません。
ただし、大きな変動がない限り、「×10」をすれば、だいたいの「実際の住宅ローン控除額」が計算できるはずです。
将来の年収を予想できる方はいませんので、だいたいで予測する方法しかないのです。
まとめ
住宅ローン控除(住宅ローン減税)の計算方法は
- 控除額(減税額) = 住宅ローンの年末残高 × 控除率:1.0%
- 所得税と住民税から、控除額(減税額)分、減税される
- この控除(減税)が10年間継続する
という簡単な計算になります。
ただし、
- ポイントその1.控除額に上限がある
- ポイントその2.所得税と住民税から控除されるのにも、限界がある
- ポイントその3.住宅ローン残高は毎年少なくなっていく
という複雑な上限設定があるので、ここを考慮する必要があります。
住宅ローンの年末残高を計算するのは、大変ですのでシミュレーションツールを利用すると良いでしょう。
シミュレーションを利用した住宅ローン控除額(住宅ローン減税額)の計算方法は
- 手順その1.シミュレーションページに行く
- 手順その2.住宅ローンの条件を入力する
- 手順その3.10年間の住宅ローン控除額を確認する
- 手順その4.自分の「所得税」「住民税」を確認する
- 手順その5.上限を考慮して、自分が使える住宅ローン控除額を計算する
という手順で計算が可能です。
「住宅ローン控除(住宅ローン減税)の金額を簡単に知る方法を教えてください。」
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