住宅ローン金利が年々低金利になる状況では、借り換えによって住宅ローンの総返済額を抑えることは、一般的な選択肢となっており、多くの方が住宅ローンの借り換えを実行しています。では、住宅ローン控除(住宅ローン現在)は、借り換えをしても、受けることはできるのでしょうか?今回は、住宅ローン控除は借り換えでも受けられるか?手続きはどうすれば良いのか?について丁寧に解説します。
住宅ローン控除は借り換えでも受けられる?
結論から言えば
そもそも、住宅ローン控除とは、国税庁のウェブサイトでは、以下のように説明されています。
住宅借入金等特別控除とは、個人が住宅ローン等を利用して、マイホームの新築、取得又は増改築等(以下「取得等」といいます。)をし、自己の居住の用に供した場合で一定の要件を満たすときにおいて、その取得等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基として計算した金額を、居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除するものです。
簡単に言えば
です。
また、下記のような記述もあります。
住宅の取得等に当たって借り入れた住宅ローン等を金利の低い住宅ローン等に借り換えることがあります。
住宅借入金等特別控除の対象となる住宅ローン等は、住宅の新築、取得又は増改築等のために直接必要な借入金又は債務でなければなりません。したがって、住宅ローン等の借換えによる新しい住宅ローン等は、従前の住宅ローンを消滅させるための新たな借入金であり原則として住宅借入金等特別控除の対象とはなりません。
このような場合であっても、一定の要件の下、借り換え後の借入金について引き続き住宅借入金等特別控除を受けられます。一定の要件とは次の全ての要件を満たす場合です。
(1) 新しい住宅ローン等が当初の住宅ローン等の返済のためのものであることが明らかであること。
(2) 新しい住宅ローン等が10年以上の償還期間であることなど住宅借入金等特別控除の対象となる要件に当てはまること。
つまり
以下の要件を満たしていれば住宅ローンの借り換えをした後も、住宅ローン控除(住宅ローン減税)は適用される
- 物件新築、取得、増改築時の当初の住宅ローンの借り換えであること
- 住宅ローン控除の適用要件に当てはまること
ということを言っているのです。
住宅ローン控除の適用要件
- 自分が住む自宅として使う場合(別荘やセカンドハウス、投資用物件は対象外)
- 床面積が50㎡以上(40㎡2以上50㎡未満については、合計所得金額が1,000万円以下の年のみ適用)
- 対象住宅は、新築住宅、中古住宅、増改築
- 中古住宅の場合、建築基準法に定められた耐震性能を有していること
- 増改築の場合、工事費が100万円以上であること
- 住宅ローンの借入期間が10年以上であること
- 合計所得金額が3,000万円以下であること
これらの条件を満たしていれば
住宅ローン控除は、住宅ローン借り換え後も受けられる
ということになります。
借り換え後の住宅ローン控除額はどうやって計算されるのか?
借り換え後の住宅ローン控除の適用で注意しなければならないのは
- 物件取得時から最大でも10年間しか住宅ローン控除は適用されない
- 借り換えを行った時の対象となる年末残高は全額が対象にンるとは限らない
という2点です。
物件取得時から最大でも10年間しか住宅ローン控除は適用されない
2010年:新築物件の取得
2015年:住宅ローン借り換え
という場合に住宅ローン控除が適用されるのは「物件取得時から10年」です。住宅ローン借り換え時から10年ではないのです。
2010年:新築物件の取得
2015年:住宅ローン借り換え
2020年:住宅ローン減税最終年
借り換えして住宅ローン控除が延長されてしまうと、住宅ローン控除が切れる前にみんなが住宅ローン借り換えを行ってしまうので、当然、そういう使い方はできないように「物件取得時から10年」という形で決まっています。
借り換えを行った時の対象となる年末残高は全額が対象にンるとは限らない
住宅ローン控除は
を所得税から控除する仕組みです。これを控除期間中は、毎年行うこととなります。
住宅ローン借り換えを行った後はどうなるかというと
借り換え前の住宅ローン残高 > 借り換え後の借入額
→ 借り換え後の住宅ローンの年末残高の合計額が控除額計算の基準となる
借り換え前の住宅ローン残高 = 借り換え後の借入額
→ 借り換え後の住宅ローンの年末残高の合計額が控除額計算の基準となる
借り換え前の住宅ローン残高 < 借り換え後の借入額
→ 借り換え後の住宅ローンの年末残高 × 借り換え前の住宅ローン残高 / 借り換え後の借入額
という計算になります。
例:住宅ローン借り換え前の住宅ローン残高:2,000万円
同じ金額の借り換えを行った場合(借り換え後の年末残高:1,950万円)
借り換え前の住宅ローン残高:2,000万円 = 借り換え後の借入額:2,000万円
→ 借り換え後の住宅ローンの年末残高の合計額:1,950万円が控除額計算の基準となる
借り換え時に自己資金:500万円を使って、借り換え後の住宅ローン残高は1,500万円にした場合(借り換え後の年末残高:1,450万円)
借り換え前の住宅ローン残高:2,000万円 > 借り換え後の借入額:1,500万円
→ 借り換え後の住宅ローンの年末残高の合計額:1,450万円が控除額計算の基準となる
借り換え時に借り換えの諸費用分:200万円も多く借入をした場合(借り換え後の年末残高:2,150万円)
借り換え前の住宅ローン残高:2,000万円 < 借り換え後の借入額:2,200万円
→ 借り換え後の住宅ローンの年末残高:2,150万円 × 借り換え前の住宅ローン残高:2,000万円 / 借り換え後の借入額:2,200万円
計算の基準となる残高 = 2,150万円 × 2,000万円 / 2,200万円 = 1,955万円
となります。
簡単にいうと
ということを意味しています。
借り換え時に、今までの住宅ローン残高よりも多くの金額を借りた場合(増額した場合)には、毎年の住宅ローン残高を増やした分を割り戻して控除額が計算されることになるのです。
住宅ローン控除を借り換え後も受けるための手続き
住宅ローン控除の手続きは、借り換えをしてもしなくても、同じ手続きをする必要があります。
- 1年目:確定申告で住宅ローン控除の申請を行う
- 2年目以降
- (給与所得者)毎年、年末調整で会社に必要書類を提出する
- (個人事業主や所得額が2,000万円を超える会社員)確定申告で住宅ローン控除の申請を行う
住宅ローン借り換え後にはじめて住宅ローン控除を受ける場合
確定申告が必要になります。
確定申告のタイミングは
- (給与所得者)入居した翌年の1月4日~3月15日まで
- (個人事業主や所得額が2,000万円を超える会社員)入居した翌年の2月16日~3月15日まで
※その年によって確定申告の期間は多少前後することがあります。
確定申告の期日は下記で確認することができます。
住宅ローン控除の確定申告の書類は
- マイナンバーカード・通知カード
- 確定申告書(国税庁のホームページ、税務署から入手)
- 住宅借入金等特別控除額の計算証明書(国税庁のホームページ、税務署から入手)
- 源泉徴収票(給与所得者の場合)
- 土地・家屋の登記事項証明書(法務局出張所に申請して取得)
- 不動産売買契約書や工事請負契約書(住宅を購入した時、新築・増改築した時の契約書)
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書(銀行から送付)
です。
必要書類を準備して、提出することで確定申告が完了します。
確定申告のやり方は
- 申告書を書いて税務署に行く
- 申告書を郵送する
- 申告書をオンライン(スマホ、パソコンから)提出する
方法があり、どの方法でも対応可能です。
不安な方は、税務署に直接出向いて、やり方を署員に聞きながら行うと確実です。
慣れている方、自信がある方でれば、マイナンバーカードとスマホで簡単に提出をすることができます。
住宅ローン借り換え前に住宅ローン控除の確定申告を済ませている場合
借り換えをしたこと自体を申告する必要はありません。
2年目以降の申請は、今まで通り、会社に書類を提出する「年末調整」だけで済むのです。
住宅ローン控除の年末調整の書類は
- 年末調整の書類
- 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(残高証明書)
の3点です。
この3点を会社に提出するだけで年末調整は完了します。税務署などに行く必要はありません。
年末調整の書類
会社から渡される書類です。住宅ローン控除関係なく、配布されるものです。
基本的には
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 給与所得者の基礎控除申告 兼 給与所得者の配偶者控除等申告 兼 所得金額調整控除申告
の3点です。
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
確定申告をした1年目の10月ごろに税務署から残りの9年分がまとめて送られてくる書類です。
住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(残高証明書)
住宅ローンを借入している金融機関から年末に送られてくる書類です。住宅ローンの借り換え後は、借り換えをした金融機関から送られてきます。
住宅ローン借り換え後の住宅ローン控除のよくある質問
連帯債務・ペアローンの場合の住宅ローン借り換え後の住宅ローン控除はどうなるの?
連帯債務・ペアローンの場合は、それぞれの持ち分に応じた金額を住宅ローン控除で利用できます。
物件価格:4,000万円
夫 50%:2,000万円
妻 50%:2,000万円
という場合は
年末残高:3800万円
夫:3,800万円 × 50%:1,900万円 × 1.0%
妻:3,800万円 × 50%:1,900万円 × 1.0%
と、持ち分比率に応じて住宅ローン控除が適用されることとなります。
住宅ローン借り換え後も、借入額や連帯債務・ペアローンの状況が変わらなければ、同じ形で住宅ローン控除が適用されます。
住宅ローン借り換え前の残高:2,400万円
住宅ローン借り換え後の借入残高:2,400万円
夫:1,200万円
妻:1,200万円
年末残高:2,200万円
夫:2,200万円 × 50%:1,100万円 × 1.0%
妻:2,200万円 × 50%:1,100万円 × 1.0%
しかし、借り換えを機に連帯債務・ペアローンを解消して、夫のみの借入にするという場合には
住宅ローン借り換え前の残高:2,400万円
住宅ローン借り換え後の借入残高:2,400万円
夫:2,400万円
妻:0円
となりますが
夫:2,200万円 × 50%:1,100万円 × 1.0%
妻:2,200万円 × 0%:0円 × 1.0%
となり
- 夫は今まで通り50%分の住宅ローン控除しか適用されない
- 妻は債務がなくなったため、住宅ローン控除は適用されない
ことになってしまうのです。
債務を一本化しても住宅ローン控除の適用は「増額には対応していない」ため、夫の適用額は100%にならず、以前のままの50%に収まるのです。
住宅ローン借り換え時に連帯債務・ペアローンの債務の一本化は、住宅ローン控除額を大きく減らしてしまう結果となってしまうので注意が必要です。同じタイミングで妻が専業主婦になるなど、控除額が使えなくなる状況であれば問題ありませんが、そうでない場合は、住宅ローン控除が終わってから債務の一本化を検討することをおすすめします。
しかも、住宅ローン借り換え時に連帯債務・ペアローンの債務を一本化してしまうと、金額によっては「贈与税」も発生してしまうため、注意が必要です。
リフォームはどうなるの?
リフォームの代金を住宅ローンで借りた場合には、借り換えをすれば、同じように借り換え後の住宅ローン残高も、一定の条件クリアで住宅ローン控除の対象となります。これは、新築の購入や中古住宅の購入と同じです。
「借り換えをしても住宅ローン控除は続けられますか?」
「住宅ローン借り換え後に住宅ローン控除を受ける手続きはどうすれば良いでしょうか?」