ペアローンとは?必ず抑えておくべきペアローンのメリットデメリット

man
「ペアローンって何ですか?」
「ペアローンを不動産会社にすすめられたのですが、どういうものかわかりません。」
「ペアローンを利用する前にデメリットを教えてください。」

住宅を購入するときに不動産会社から勧められる方が多い「ペアローン」ですが、「ペアローン」の仕組みを正確に理解している方はほとんどいないのが現状です。今回は、ペアローンのメリットデメリットをどこよりもわかりやすく解説します。

そもそも、ペアローンって何?

ペアローンとは

ペアローンとは、同一物件に対して複数の債務者(借りる人)がそれぞれローン契約を行い、お互いに連帯保証人になる借入方法のこと

を言います。

「ペア」は、実際にはだれでも良いのですが、多くの場合は「夫婦」で「ペア」になります。

簡単に言い換えれば

ペアローンとは、同じ物件を「夫」「妻」のそれぞれが住宅ローンを契約すること

と言えます。

販売価格8,000万円の分譲マンションを購入する場合に

  • 夫:5,600万円の住宅ローンを借りる
  • 妻:2,400万円の住宅ローンを借りる

合計8,000万円で購入費用を支払います。

これがペアローンの仕組みであり、夫、妻、それぞれが個別でローン契約を銀行・金融機関と締結することになります。

ペアローンってどんな時に使うの?

いろいろなケースがありますが、最も多いのは「夫」単独では、住宅ローン審査が通らないというケースです。

住宅ローンの審査で、銀行が審査する項目の一つに「返済負担率」というものがあります。

返済負担率 = ローン返済額 / 年収

年収に対するローン返済の割合のことですが、これが高すぎると生活ができなくなるとみなされ、審査に通らないのです。

これをわかりやすい指標としたのが「年収倍率」です。

年収倍率 = ローン借入額 / 年収

で示されますが「年収の何倍まで借りられるのか?」を示す指標です。

一般的な銀行の場合、年収倍率は高くても7倍です。

つまり

年収800万円の方(夫)が単独で販売価格8,000万円の分譲マンションを購入する場合に

年収倍率 = 8,000万円 / 800万円 = 10倍

ですから、審査の許容範囲の7倍を大きく超えてしまっているため、

審査落ち

となってしまうのです。

このようなケースで不動産会社や銀行からすすめられるのが「ペアローン」です。

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「奥様も働いていらっしゃるのであれば、ペアローンを検討されてみてはいかがでしょうか?ペアローンであれば借りられるはずです。」

という形です。

夫(年収:800万円)単独で住宅ローンを借りる場合

年収倍率 = 8,000万円 / 800万円 = 10倍 → 7倍を超えているので審査落ち

ですが

夫(年収:800万円)と妻(年収:400万円)でペアローンで住宅ローンを借りる場合

夫の年収倍率 = 5,600万円 / 800万円 = 7倍 → 7倍を超えていないので審査通過
妻の年収倍率 = 2,400万円 / 400万円 = 6倍 → 7倍を超えていないので審査通過

住宅ローンを夫(妻)単独では審査が通らないものが、夫と妻の別々の住宅ローンを組むことで、住宅ローン審査に通る可能性が高まるのです。

このようなシチュレーションで利用する機会が多いのが「ペアローン」です。

当然ですが、共働き世帯でないとペアローンは利用できません。どちらかが専業主婦(専業主夫)の場合、収入が0円なのですから、夫婦ともに別々の住宅ローンを契約することができないためです。

ペアローンの特徴

ペアローンの諸費用

ペアローンでは「夫」と「妻」で別々の住宅ローンを組む形になります。

事務手数料は

夫単独

8,000万円 × 2.2%(税込) = 176万円(税込)

ペアローン

5,600万円 × 2.2%(税込) = 123.2万円(税込)
2,400万 × 2.2%(税込) = 52.8万円(税込)

合計:176万円(税込)

と、ペアローンであっても、借入額が同じであれば負担は変わらないのですが・・・

  • 印紙代:2万円程度
  • 司法書士報酬:5万円~10万円程度

は、すべて2倍になってしまうのです。

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利息負担は、金利が同じ、借入総額が同じ、であれば「ペアローン」であっても、「単独の借入」とまったく変わりません。

ペアローンの連帯保証人

単独の借り入れの場合

単独の夫名義で住宅ローンを組んだ場合には、妻は連帯保証人になる必要はありません。

逆もしかりです。

単独の妻名義で住宅ローンを組んだ場合には、夫は連帯保証人になる必要はありません。

ペアローンの場合

夫名義で契約する住宅ローン借り入れ分 → 妻が連帯保証人になる
妻名義で契約する住宅ローン借り入れ分 → 夫が連帯保証人になる

形で、相互に連帯保証人になる必要性が出てきます。

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連帯保証人というのは、借りた人と同じ返済義務を持つため、万が一、夫が返済不能状態になれば、「夫」の借り入れ分も、連帯保証人である「妻」が返済しなければならないのです。

ペアローンで購入した物件の所有権

ペアローンで購入した物件は、出資比率に応じて持ち分を分けた共有不動産となります。

つまり、

ペアローンの負担割合 = 所有権の持ち分の割合

ということになります。

ペアローンの負担割合は、自由に調整できるため

8,000万円の分譲住宅をペアローンであれば

夫:5,600万円(70%) → 持ち分:70%
妻:2,400万円(30%) → 持ち分:30%

夫:4,000万円(50%) → 持ち分:50%
妻:4,000万円(50%) → 持ち分:50%

夫:3,200万円(40%) → 持ち分:40%
妻:4,800万円(60%) → 持ち分:60%

という形になります。

ペアローンの団信(団体信用生命保険)

民間住宅ローンの場合は、契約者が死亡した場合に住宅ローンの債務が免除(保険金で残債が支払われる)される形の生命保険「団信(団体信用生命保険)」の加入が義務付けられています。

ペアローンの場合も

  • 夫が契約した住宅ローン借り入れ分 → 夫がその借入額の「団信(団体信用生命保険)」に加入する
  • 妻が契約した住宅ローン借り入れ分 → 妻がその借入額の「団信(団体信用生命保険)」に加入する

形になるため、夫婦ともに「団信(団体信用生命保険)」に加入している状態になります。

ただし、団信の範囲は契約しているローン残高分までですので

夫が死亡した場合

8,000万円の分譲マンションを夫単独の借り入れの場合

夫が死亡したら、8,000万円の住宅ローンが0円になり、妻の住宅ローン負担は0円になる

8,000万円の分譲マンションをペアローン(夫70%、妻30%)の借り入れの場合

夫が死亡したら、夫の契約分の5,600万円の住宅ローンが0円になるが
妻の契約している住宅ローン分の2,400万円はそのままですので、住宅ローン負担は残る

ことになるのです。

妻が死亡した場合

8,000万円の分譲マンションを夫単独の借り入れの場合

妻が死亡しても、8,000万円の住宅ローン契約に影響はないため、全額の住宅ローンが残る

8,000万円の分譲マンションをペアローン(夫70%、妻30%)の借り入れの場合

妻が死亡したら、妻の契約分の2,400万円の住宅ローンが0円になるが
夫の契約している住宅ローン分の5,600万円はそのままですので、住宅ローン負担は残る

ことになるのです。

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「団信(団体信用生命保険)」には、ペアローンのメリットもあれば、デメリットもあるのです。

ペアローンの住宅ローン減税(住宅ローン控除)

住宅ローン減税(住宅ローン控除)とは

住宅ローンでお金を借り手マイホームを取得した方の税金(所得税・住民税)の一部が控除(減税される)制度のこと

を言います。

対象物件一般住宅認定住宅
居住年平成26年4月~令和4年12月
※注文住宅の契約:令和2年10月1日~令和4年9月30日までに契約締結
※分譲住宅の契約:令和2年10月1日~令和4年11月30日までに契約締結
平成26年4月~令和4年12月
※注文住宅の契約:令和2年10月1日~令和4年9月30日までに契約締結
※分譲住宅の契約:令和2年10月1日~令和4年11月30日までに契約締結
年末残高の上限4,000万円5,000万円
控除率1.0%1.0%
控除期間13年13年
所得税控除上限/年40万円
11年目~13年目は
「借入金年末残高(上限4,000万円)の1%」か「建物購入価格(上限4,000万円)の2%の3分の1」のいずれか小さい額
50万円
11年目~13年目は
「借入金年末残高(上限5,000万円)の1%」か「建物購入価格(上限4,000万円)の2%の3分の1」のいずれか小さい額
住民税控除上限/年13.65万円/前年課税所得×7%13.65万円/前年課税所得×7%
主な利用条件10年以上の住宅ローンを組むこと
床面積50㎡以上
所得1,000万円以下は床面積40㎡以上
中古住宅の場合は耐震基準に適合すること
10年以上の住宅ローンを組むこと
所得1,000万円以下は床面積40㎡以上
認定長期優良住宅・認定低炭素住宅であること

ペアローンの場合、夫婦ともに住宅ローンを借りるため

  • 夫:住宅ローン控除(住宅ローン減税)を利用できる
  • 妻:住宅ローン控除(住宅ローン減税)を利用できる

のです。

住宅ローン控除(住宅ローン減税)では、控除額に上限が用意されています。

一般住宅:4,000万円の1.0%
8,000万円の分譲マンションを夫単独の借り入れの場合

住宅ローン控除(住宅ローン減税)は、上限の4,000万円の1.0%(40万円)

8,000万円の分譲マンションをペアローン(夫70%、妻30%)の借り入れの場合

住宅ローン控除(住宅ローン減税)は

夫の借入額5,600万円に対して、上限の4,000万円の1.0%(40万円)
妻の借入額2,400万円に対して、2,400万円の1.0%(24万円)

合計:6,400万円の1.0%(64万円)

となるため、

住宅ローン控除(住宅ローン減税)に関しては、ペアローンの方が上限が2人分に増やせるので、控除額が大きくできるメリットがあるのです。

これは、ペアローンを利用する最大のメリットと言っても良いでしょう。

ペアローンのメリット

メリットその1.審査に通りやすくなる!

ペアローンを利用しない場合
  • 夫(妻)単独の収入で審査が行われる → 「年収倍率」「返済負担率」が不利な数字になる → 審査に落ちやすい
ペアローンを利用した場合
  • 夫と妻の収入で個別に審査が行われる(借入額も分配するため低くなる) → 「年収倍率」「返済負担率」が有利な数字になる → 審査が通りやすい

ということになります。

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とくに都心部での物件価格は、年々上昇の一途をたどっています。その反面、収入は伸びておらず、物価が上昇しているのですから、共働き世帯が増え、単独での借り入れが難しくなっている状況にあります。

共働き世帯にとっては、ペアローンは住宅ローン審査に通るための重要な選択肢となっているのです。

メリットその2.住宅ローン控除(住宅ローン減税)の金額が上がる

前述した通りで、と都心部の物件価格は、年々上昇しています。

住宅ローン控除(住宅ローン減税)の上限4,000万円で、購入できる分譲マンションや戸建ては、23区内にはほとんどないのです。

となると、23区内の多くの物件では、上限以上の住宅ローンを組んで購入していることになります。

そのような方の場合

  • 単独での住宅ローン控除 → 上限4,000万円
  • 夫婦でのペアローンの住宅ローン控除 → 上限8,000万円(2人分)

となるため、上限を拡大できる分、控除額を増やせるのです。

これはわかりやすいペアローンの金銭的メリットと言えます。

メリットその3.「団信」が夫婦ともに入れる

ペアローンの場合は、夫婦ともに別々の住宅ローンを契約することになるため

  • 夫 → 借入分の「団信」に加入する
  • 妻 → 借入分の「団信」に加入する

ことになります。

夫婦のどちらか一方が死亡してしまった場合に、残された遺族の住宅ローン返済負担は軽減できるのです。
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夫単独で住宅ローンを契約した場合に、妻が死亡しても、妻は「団信」に加入していないため、住宅ローンの返済負担はなくならないのです。

ペアローンのデメリット

デメリットその1.諸費用負担も2倍になる

ネット銀行の事務手数料であれば「借入額×2.2%(税込)」が相場で、借入額が同じですのでペアローンであっても、事務手数料の負担は変わりません。

しかし、

  • 印紙代
  • 司法書士報酬
  • 抵当権設定費用

などは、2本住宅ローンを契約するため、契約書も2つになりますし、登記も、2つ行わなければならないため、2倍になってしまうのです。※登録免許税は、借入額に対する割合ですので、ペアローンでも、単独の借り入れでも同じになります。

  • 印紙代:2万円程度
  • 司法書士報酬:5万円~10万円程度

が増えてしまうため、ペアローンを利用するのであれば、電子契約を採用している住宅ローンを採用していることをおすすめします。電子契約であれば、印紙代が不要です。

デメリットその2.ライフスタイルの変化に対応できないリスクがある

「共働きをずっと継続する」というのであれば問題はありませんが・・・

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「妻が子供ができて働けなくなった。」
「どちらか一方が病気で働けなくなった。」
「どちらか一方が親の介護で働けなくなった。」

という状況も発生します。

こうなると、夫婦ともに別々の住宅ローンを契約するのがペアローンですから、どちらか一方が返済できない状態になれば、それは「連帯保証人である片方が全額の債務を返済しなければならない」ということを意味しています。

夫(年収:800万円)単独で住宅ローンを借りる場合

年収倍率 = 8,000万円 / 800万円 = 10倍 → 7倍を超えているので審査落ち

という状態だから、ペアローンを選択して

夫(年収:800万円)と妻(年収:400万円)でペアローンで住宅ローンを借りる

夫:5,600万円の借入
妻:2,400万円の借入

という形を取ったのに、結局、妻が働けなくなれば

夫:5,600万円の借入
妻:2,400万円の借入(連帯保証人である夫が返済義務を負う

夫が銀行も審査を通さなかった、高い返済負担で返済を継続しなければならなくなる

ということを意味しているのです。

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それでも、返済を継続できれば良いのですが、結局夫も返済できなくなってしまえば、マイホームを手放すしかありません。共働きができなくなるリスクが、ペアローンの最大のデメリットと言えます。

デメリットその3.持ち分所有はトラブルにつながりやすい

夫婦が仲が良いときは問題ありませんが、離婚するときなどは、トラブルに発展しやすいのです。

離婚による共有の解消・整理をする場合

  • 財産分与
  • 相互間の売買
  • 第三者への売却

という選択肢になりますが、なかなか「財産分与」「相互間の売買」というのはまとまらない可能性が大きいのです。

夫婦間で売買して、所有権をどちらか一方に移す

ということが簡単にできれば良いのですが・・・

  • 持ち分を購入できる資産(現金)がないケースが多い
  • 持ち分を購入するお金を貸してくれる銀行が見つからないケースが多い
  • 無断で所有権の移転をすれば、銀行から全額返済を求められることがある

ため、

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住み続けるのは夫か、妻のどちらか一方だけど
所有権は動かせないため、そのまま保有していて
自分の契約した住宅ローンも離婚して別居しているのに返済を続けざるを得ない

というような状況が起こってしまうのです。

銀行も、ペアローンだから審査を通したのであって、どちらか一方の収入だけでは元々審査に通らなかったものですから、「離婚とともに債務を一本化したい」と思っても、銀行がその費用を貸してくれないケースが多いのです。

デメリットその4.「団信」で全額住宅ローンが免除にならない

前述した通りで

8,000万円の分譲マンションをペアローン(夫70%、妻30%)の借り入れの場合

夫が死亡したら、夫の契約分の5,600万円の住宅ローンが0円になるが
妻の契約している住宅ローン分の2,400万円はそのままですので、住宅ローン負担は残る

妻が死亡したら、妻の契約分の2,400万円の住宅ローンが0円になるが
夫の契約している住宅ローン分の5,600万円はそのままですので、住宅ローン負担は残る

どちらにしても、どちらか片方が死亡してしまった場合「団信(団体信用生命保険)」の保険金が支払われても、もう片方の住宅ローンの残債は残っているため、ローン返済は続けなければならない

というデメリットがあります。

まとめ

ペアローンとは

  • ペアローンとは、同一物件に対して複数の債務者(借りる人)がそれぞれローン契約を行い、お互いに連帯保証人になる借入方法のこと

を言います。

ペアローンのメリットは

  • メリットその1.審査に通りやすくなる!
  • メリットその2.住宅ローン控除(住宅ローン減税)の金額が上がる
  • メリットその3.「団信」が夫婦ともに入れる

ペアローンのデメリットは

  • デメリットその1.諸費用負担も2倍になる
  • デメリットその2.ライフスタイルの変化に対応できないリスクがある
  • デメリットその3.持ち分所有はトラブルにつながりやすい
  • デメリットその4.「団信」で全額住宅ローンが免除にならない

というものがあります。

teacher
ペアローンは、メリットもデメリットも大きいため、慎重に利用を検討する必要があります。住宅ローンの審査の面で、ペアローンしか選択肢がないという方も、今一度それが最適な選択肢なのかいろいろなケーススタディをしてみることをおすすめします。ライフスタイルの変化で、返済が滞ってマイホームを結果的に手放さなければならなくなるというのが最悪な状況ですので、そうならない対策が必要となります。
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