住宅ローンを検討している方が不安になるのは住宅ローンの本審査です。今回は住宅ローンの本審査の内容と審査通過のコツ、仮審査との違いについて解説します。
住宅ローンの本審査(正式審査)とは?
住宅ローンでは、概ね申込みから審査、融資までの流れはこうなっています。
ネット銀行/都市銀行のネット申込み
- 仮審査(事前審査)申込
- 仮審査(事前審査)
- 仮審査(事前審査)結果連絡
- 本審査(正式審査)の申込書類送付
- 本審査(正式審査)の申込書類返送
- 本審査(正式審査)
- 本審査(正式審査)の結果連絡
- 契約(ウェブ/来店)
- 融資実行
都市銀行/地方銀行の窓口申込み
- 来店予約
- 窓口で相談/申込書類のお渡し
- 窓口で申込/申込書類の提出
- 本審査(正式審査)
- 本審査(正式審査)の結果連絡
- 契約(来店)
- 融資実行
すべての銀行が上記の手順になっているわけではありませんが概ね
- ネット経由 → 仮審査(事前審査)あり
- 窓口申込 → いきなり本審査(正式審査)
となっています。
住宅ローンの仮審査(事前審査)の役割というのは
があるのです。
なぜ、そんな「ふるいに掛ける」ようなことをするのか?というと
本審査(正式審査)をするにも、銀行はそれなりにコストが発生する
からなのです。
- 本審査のための正式な申込書の郵送費用
- 本審査のための正式な申込書の印刷費用
- 担保にする物件の担保価値の算定費用
- 担保にする物件の法律面のチェック費用
- 審査に掛かる審査コスト
- 団信の保険会社への審査依頼コスト
- 保証会社への審査依頼コスト
・・・
銀行としては
というのが本音なのです。
簡単な例を上げるとすれば
- Aさん:審査が確実に通る
- Bさん:審査が通るかどうかギリギリ
- Cさん:審査が確実に通らない
- Dさん:審査が確実に通らない
- Eさん:審査が確実に通る
- Fさん:審査が確実に通る
- Gさん:審査が通るかどうかギリギリ
- Hさん:審査が確実に通る
- Iさん:審査が確実に通らない
- Jさん:審査が確実に通らない
という10名がいた場合には、10名全員に本審査(正式審査)をしてしまうと、10名分の審査コストが発生してしまいます。
だったら、簡単な審査で「審査が確実に通らない」4名を省いて、6名だけ本審査(正式審査)をした方が銀行として経営効率が良いのです。
来店してもらったときにある程度の情報を銀行の担当者がヒアリングできるので、「窓口での面談」が仮審査(事前審査)と同じフィルタリング機能を持つからなのです。
窓口に住宅ローンの相談に行った段階で、担当者が「この人はうちの審査基準では審査に通らないな。」と感じたら、丁重に断るか?審査のハードルが低いフラット35をすすめるフローになっているのです。
住宅ローンの仮審査(事前審査)とは
住宅ローンの本審査(正式審査)とは
を言うのです。
住宅ローンの本審査の審査内容とは?
銀行の住宅ローン審査の審査項目で「重視するもの」
重要度 | 審査項目 | 回答数 | 構成比 |
---|---|---|---|
1位 | 完済時年齢 | 1.238 | 98.8% |
2位 | 借入時年齢 | 1.223 | 97.6% |
3位 | 健康状態 | 1.223 | 97.6% |
4位 | 勤続年数 | 1.218 | 97.2% |
5位 | 担保評価 | 1.218 | 97.2% |
6位 | 年収 | 1.183 | 94.4% |
7位 | 連帯保証 | 1.171 | 93.5% |
8位 | 金融機関の営業エリア | 1.126 | 89.9% |
9位 | 返済負担率 | 1.103 | 88.0% |
10位 | 融資可能額(融資率)①購入の場 合 | 1.019 | 81.3% |
11位 | 雇用形態 | 980 | 78.2% |
12位 | 融資可能額(融資率)②借換えの 場合 | 956 | 76.3% |
13位 | カードローン等の他の債務の状況 や返済履歴 | 812 | 64.8% |
14位 | 国籍 | 775 | 61.9% |
15位 | 申込人との取引状況 | 615 | 49.1% |
16位 | 業種 | 368 | 29.4% |
17位 | 家族構成 | 289 | 23.1% |
18位 | 所有資産 | 256 | 20.4% |
19位 | 雇用先の規模 | 209 | 16.7% |
20位 | 性別 | 202 | 16.1% |
21位 | その他 | 83 | 6.6% |
です。
一つ一つの審査項目の説明はこちらを参考にしてください。
住宅ローンの仮審査(事前審査)と本審査(正式審査)の違い
大前提として
しかし、仮審査(事前審査)は簡易的な審査ですので、仮審査(事前審査)時点である情報を基に審査を行います。
- ネット申込み時に入力した申込フォームの情報
- 銀行が照会できる個人信用情報
- 銀行と申込者の取引情報
の3点です。
また、審査にお金がかかる、審査に時間がかかる
- 物件に関する審査
- 勤務先企業に関する審査
- 配偶者に関する審査
は、仮審査(事前審査)の時点では、行われないのです。
仮審査(事前審査)の時点では
ネット申込み時に入力した申込フォームの情報
- 完済時年齢
- 借入時年齢
- 勤続年数
- 年収
- 返済負担率
- 融資可能額(融資率)
- 雇用形態
- 業種
- 家族構成
- 雇用先の規模
- 性別
銀行が照会できる個人信用情報
- カードローン等の他の債務の状況や返済履歴
銀行と申込者の取引情報
- 申込人との取引状況
ぐらいが審査項目となります。
本審査(正式審査)で審査されるもの
本審査(正式審査)の時点では、必要書類が提出されている状態になります。
住宅ローンの必要書類
- 住宅ローン借入申込書(保証委託申込書)
- 個人情報に関する同意書
- 団体信用生命保険申込書兼告知書
- ご本人確認書類(免許証やパスポートなど)
- 収入に関する書類(源泉徴収票、確定申告書、法人の決算書)
- 物件に関する書類(売買契約書、重要事項説明書、物件概要書、図面、検査済証、建築確認済証、土地登記事項証明書、建物登記事項証明書、公図など)
- 他社借入の償還予定表、残高証明書
- 連帯保証人の方の本人確認書類
・・・
この時点ではじめて
- 住宅ローン借入申込書(保証委託申込書) → 保証会社が審査ができる
- 団体信用生命保険申込書兼告知書 → 保険会社が審査ができる
- 物件に関する書類 → 物件の審査ができる
ことになるのです。
本審査(正式審査)では審査する会社が増える
仮審査(事前審査)
審査主体:銀行
本審査(正式審査)
審査主体:銀行、保証会社、保険会社
保証会社の審査
保証会社というのは、銀行から保証料をもらうかわりに、万が一住宅ローンの利用者が返済を継続できなくなった場合には、残りのローン残高分を肩代わりして銀行に返済する役割(代位弁済)を持つ会社です。
銀行は保証会社をつけることで、貸し倒れリスクなしで住宅ローンを提供できるのです。
保証会社は、万が一住宅ローンの利用者が返済を継続できなくなった場合に、ローン残債を肩代わり返済しなければならなくなってしまうので、銀行よりも本気で返済能力の審査をします。
銀行としては、貸し倒れになっても、保証会社が貸し倒れ損失は被るのですから、痛くも痒くもないのです。(※保証会社を利用していない銀行もあります。)
審査の厳しさ
銀行の審査 < 保証会社の審査
保険会社の審査
民間銀行の場合は、団信(団体信用生命保険)の加入が必須条件になっているため、本審査(正式審査)では「団体信用生命保険申込書兼告知書」に基づいて生命保険会社が審査を行います。
これは、ほとんどどの銀行の住宅ローンでも、同じ審査になりますが、健康状態に問題がある場合には、団信の審査が通らず、住宅ローンの本審査(正式審査)も通らないことになってしまいます。団信の審査に通らない場合は「団信が任意加入のフラット35を選択する」という方法しかなくなります。
本審査(正式審査)では「物件の審査」が加わる
物件の審査とは?
この物件を担保にして住宅ローンを組むのですから
- 物件の担保価値の算定
- 物件が建築基準法などの法律に則っているかの確認
が必要になります。
担保価値が銀行が想定するよりも低かった場合には
という条件つきの審査通過となってしまいます。
また、物件が建築基準法などの法律に則っていない違法建築の場合は、ほとんど審査は通りません。
本審査(正式審査)では「納税の審査」が加わる
本審査(正式審査)の提出書類には
会社員の方
- 源泉徴収票
- 住民税決定通知書(課税証明書)
個人事業主の方
- 確定申告書
- 所得税納税証明書
- 事業税納税証明書
会社経営者の方
- 決算書
- 法人税納税証明書
- 法人事業税納税証明書
があります。
これは「収入の証拠」という意味も持ちますが、「納税をしているかどうか?」もチェックされるのです。
銀行は「税金未納」「税金納付遅延」に非常に敏感です。
なぜなら、銀行などの債権者よりも、税務署の税金取り立ての方が力が強いからです。貸し倒れになったとしても、債権者よりも、税務署の方が先に弁済を受ける権利があるのです。
本審査(正式審査)では「税金未納」「税金納付遅延」という「納税の審査」が加わるのです。
「税金未納」「税金納付遅延」では、住宅ローン審査に落ちてしまいます。
本審査(正式審査)では「証拠アリ」の情報で再度審査が行われる
仮審査(事前審査)でも
- 完済時年齢
- 借入時年齢
- 勤続年数
- 年収
- 返済負担率
- 融資可能額(融資率)
- 雇用形態
- 業種
- 家族構成
- 雇用先の規模
- 性別
が「ネット申込み時に入力した申込フォームの情報」つまり、「自己申告の情報」で審査されていました。
しかし、本審査(正式審査)では
- 収入に関する書類(源泉徴収票、確定申告書、法人の決算書)
- 本人確認書類
- 他社借入の償還予定表、残高証明書
などの必要書類がある状態で審査をするので、この時点で「証拠アリ」の正確な情報で審査ができるようになるのです。
申込フォームの情報では
「審査のために良く見せたいから、463万円の年収を500万円としておこう。」
「審査のために良く見せたいから、121万円の他社借入を100万円としておこう。」
と、「自己申告の情報」でサバを読んでしまう方も少なくありません。
また、虚偽の申告をするつもりがなくても、
正確な数字を知らない。
ということも往々にしてあるのです。
注意点
あまりに「自己申告の情報」と「書類にかかれている情報」の差が激しい場合には、銀行は「この人はうそをつく人」として判断してしまいます。誤差の範囲であれば問題ありませんが、虚偽の申告は「信用できない人」として、審査の評価が下がってしまうのです。
仮審査(事前審査)の段階でも、ある程度正確な情報を入力することを心がけましょう。
まとめると
住宅ローンの本審査(正式審査)では
- 「保険会社」「保証会社」の審査が加わる
- 建物の審査が加わる
- 納税の審査が加わる
- 提出書類の正確な情報で再度審査が行われる
- 仮審査(事前審査)の入力情報と提出書類の情報の整合性のチェックが行われる
のです。
これらをクリアして、晴れて「住宅ローンの審査に通った。」ということになります。
住宅ローン本審査(正式審査)の審査通過のコツ
複数の住宅ローンに仮申込する
住宅ローンの審査というのは、これだけの項目を審査するので、一つ一つは銀行ごとに多少の違いだとしても、全体で見るとかなりの違いが出てくるのです。
- 保証会社を使っている銀行か?使っていない銀行か?
- 金利・金利タイプの違い
- 銀行の種類の違い
- 銀行の状況(住宅ローン貸出残高を増やしたいか?増やしたくないか?)
によって、審査基準というのは大きく異なるのです。
住宅ローンの審査項目はほぼ同じでも、銀行によって審査基準の設定は大きく異なるため
複数の住宅ローンに仮申込することで、審査に通る確率を大きく引き上げることができるのです。
仮審査(事前審査)と本審査(正式審査)の違いは前述した通りで
- 仮審査(事前審査)が通ったのに本審査(正式審査)で審査落ちする
ことは往々にして起こりうるのですが、それでも
- 仮審査(事前審査)が通れば、本審査(正式審査)に通る可能性は高い
のは間違えありません。
審査の甘い住宅ローンはこちら
審査落ちしたら、原因を自分なりに考えて対策を取る
ということであれば、原因はいくつかに絞られます。
考えられる要因としては
- 建物が銀行の審査基準をクリアしていない
- 建物が違法建築である
- 仮審査申込みの情報と提出した必要書類の情報に大きなかい離がある
- 仮審査申込みの時と本審査申込みの時で「他社借入状況」が異なる
- 仮審査申込みの時と本審査申込みの時で「勤務先企業の状況」が異なる
- 団信の審査に通らなかった
- 会社経営者で本審査で提出した決算書に問題がある
- 税金を延滞した、税金を支払っていない
などがあります。
ちなみに建物の担保価値が不足していた場合は「○○万円までなら融資できます。」と言われるケースが多いようです。
審査落ちの理由は銀行に聞いても、教えてくれませんので、自分で理由を「これじゃないか?」と想定した上で
問題点を改善してから他の住宅ローンに申込む方法を取りましょう。
まとめ
住宅ローンの本審査(正式審査)とは
- 住宅ローンの本来の審査のこと
で、住宅ローンを利用する場合には必ず行われる審査のことを言います。
仮審査(事前審査)と比較すると
住宅ローンの本審査(正式審査)では
- 「保険会社」「保証会社」の審査が加わる
- 建物の審査が加わる
- 納税の審査が加わる
- 提出書類の正確な情報で再度審査が行われる
- 仮審査(事前審査)の入力情報と提出書類の情報の整合性のチェックが行われる
という特徴があります。
「仮審査と本審査では何が違うの?」