当初10年固定金利の落とし穴。当初10年固定金利より変動金利の方が金利上昇リスクは少ない!?

woman
「変動金利は低金利だけど、当初10年固定金利の方が良いかな?」
「全期間固定金利は金利上昇リスクがないけど、変動金利は怖い。」
・・・

と勘違いしている方も非常に多いようです。今回は、住宅ローンの当初10年固定金利の落とし穴について解説します。

当初10年固定金利より変動金利の方が金利上昇リスクは少ない!

woman
当初10年固定金利より、変動金利の方が金利上昇リスクは少ないってどういうこと?
concierge

論より証拠です。

まずは「当初10年固定金利」と「変動金利」を金利上昇パターンを変えて、総返済額をシミュレーションしてみます。

「当初10年固定金利」と「変動金利」の金利上昇局面の総返済額比較

検証した住宅ローン

住信SBIネット銀行
2017年8月時点金利

  • 通期引下げプラン「変動金利」:0.444%
  • 当初引下げプラン「10年固定金利」:0.660%
    (当初期間中の金利引き下げ:基準金利から-1.70%)
    (当初期間終了後の金利引き下げ:基準金利から-0.70%)

検証条件

  • 借入額:3000万円
  • 返済期間:35年

金利上昇検証パターン

  • 金利変動なし
  • 5年目金利0.5%上昇
  • 5年目金利1.0%上昇
  • 5年目金利1.5%上昇
  • 5年目金利2.0%上昇
  • 10年目金利0.5%上昇
  • 10年目金利1.0%上昇
  • 10年目金利1.5%上昇
  • 10年目金利2.0%上昇
  • 20年目金利0.5%上昇
  • 20年目金利1.0%上昇
  • 20年目金利1.5%上昇
  • 20年目金利2.0%上昇

試算で利用した返済シミュレーション機能

返済シミュレーションツールはこちら

「変動金利」の総返済額

検証パターン 変動金利
借入時金利 上昇後金利 総返済額 毎月返済額(最大)
金利変動なし 0.444% 0.444% 32,396,669 77,135
5年目金利0.5%上昇 0.444% 0.944% 34,486,685 82,941
5年目金利1.0%上昇 0.444% 1.444% 36,673,256 89,015
5年目金利1.5%上昇 0.444% 1.944% 38,955,281 95,354
5年目金利2.0%上昇 0.444% 2.444% 41,331,271 101,954
10年目金利0.5%上昇 0.444% 0.944% 33,848,928 81,976
10年目金利1.0%上昇 0.444% 1.444% 35,357,818 87,006
10年目金利1.5%上昇 0.444% 1.944% 36,922,901 92,223
10年目金利2.0%上昇 0.444% 2.444% 38,543,530 97,625
20年目金利0.5%上昇 0.444% 0.944% 32,920,538 80,046
20年目金利1.0%上昇 0.444% 1.444% 33,456,963 83,026
20年目金利1.5%上昇 0.444% 1.944% 34,005,890 86,075
20年目金利2.0%上昇 0.444% 2.444% 34,567,267 89,194

「当初10年固定金利」の総返済額

検証パターン 当初10年固定金利
借入時金利 10年目金利 総返済額 毎月返済額(最大)
金利変動なし 0.660% 1.660% 37,975,689 90,152
5年目金利0.5%上昇 0.660% 2.160% 38,252,576 95,503
5年目金利1.0%上昇 0.660% 2.660% 39,913,837 101,041
5年目金利1.5%上昇 0.660% 3.160% 41,629,997 106,761
5年目金利2.0%上昇 0.660% 3.660% 43,400,132 112,662
10年目金利0.5%上昇 0.660% 2.160% 38,252,576 95,503
10年目金利1.0%上昇 0.660% 2.660% 39,913,837 101,041
10年目金利1.5%上昇 0.660% 3.160% 41,629,997 106,761
10年目金利2.0%上昇 0.660% 3.660% 43,400,132 112,662
20年目金利0.5%上昇 0.660% 1.660% 37,239,696 93,444
20年目金利1.0%上昇 0.660% 1.660% 37,845,519 96,809
20年目金利1.5%上昇 0.660% 1.660% 38,464,554 100,248
20年目金利2.0%上昇 0.660% 1.660% 39,096,690 103,760

「当初10年固定金利」と「変動金利」の総返済額比較

検証パターン 変動金利 当初10年固定金利 比較
総返済額 総返済額
金利変動なし 32,396,669 37,975,689 +5,579,020円
5年目金利0.5%上昇 34,486,685 38,252,576 +3,765,891円
5年目金利1.0%上昇 36,673,256 39,913,837 +3,240,581円
5年目金利1.5%上昇 38,955,281 41,629,997 +2,674,716円
5年目金利2.0%上昇 41,331,271 43,400,132 +2,068,861円
10年目金利0.5%上昇 33,848,928 38,252,576 +4,403,648円
10年目金利1.0%上昇 35,357,818 39,913,837 +4,556,019円
10年目金利1.5%上昇 36,922,901 41,629,997 +4,707,096円
10年目金利2.0%上昇 38,543,530 43,400,132 +4,856,602円
20年目金利0.5%上昇 32,920,538 37,239,696 +4,319,158円
20年目金利1.0%上昇 33,456,963 37,845,519 +4,388,556円
20年目金利1.5%上昇 34,005,890 38,464,554 +4,458,664円
20年目金利2.0%上昇 34,567,267 39,096,690 +4,529,423円

結果

少なくとも、前述したどの金利上昇パターンでも、

  • 金利変動なし:「変動金利」の方が総返済額が安い
  • 5年目金利0.5%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
  • 5年目金利1.0%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
  • 5年目金利1.5%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
  • 5年目金利2.0%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
  • 10年目金利0.5%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
  • 10年目金利1.0%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
  • 10年目金利1.5%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
  • 10年目金利2.0%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
  • 20年目金利0.5%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
  • 20年目金利1.0%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
  • 20年目金利1.5%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
  • 20年目金利2.0%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い

という結果なのです。

しかも、10年目以降の金利上昇の場合は、金利上昇率が増えれば増えるほど「当初10年固定金利」の方が総返済額が高くなってしまっているので

  • 10年目金利0.5%上昇:+4,403,648円
  • 10年目金利1.0%上昇:+4,556,019円
  • 10年目金利1.5%上昇:+4,707,096円
  • 10年目金利2.0%上昇:+4,856,602円
  • 20年目金利0.5%上昇:+4,319,158円
  • 20年目金利1.0%上昇:+4,388,556円
  • 20年目金利1.5%上昇:+4,458,664円
  • 20年目金利2.0%上昇:+4,529,423円

この2つの住宅ローンの場合は

どんな形で金利が上昇したとしても

「変動金利」の方が総返済額が安くなる

= 「変動金利」の方が「当初10年固定金利」よりも金利上昇リスクが少ない

という結果になっているのです。

ただし、5年目の金利上昇は金利上昇率の増加に伴い微減しているので

  • 5年目金利0.5%上昇:+3,765,891円
  • 5年目金利1.0%上昇:+3,240,581円
  • 5年目金利1.5%上昇:+2,674,716円
  • 5年目金利2.0%上昇:+2,068,861円
5年目に金利が5.0%以上の急上昇した場合のみ、「当初10年固定金利」が「変動金利」よりも有利になる可能性があります。
woman
「えっ、ウソでしょ!?なんで、金利上昇しているのに当初10年固定金利の方が総返済額が高くなってしまうの?」

その理由を解説します。

当初10年固定金利より変動金利の方が金利上昇リスクは少ない理由

理由は「当初10年固定金利の当初期間終了後の金利」にあります。

当初固定金利は大きく分けて2種類の金利タイプがあります。

  1. 通期引下げプラン:当初期間も、当初期間終了後も、基準金利からの引き下げ幅が変わらない
  2. 当初引下げプラン:当初期間は、当初期間終了後も、基準金利からの引き下げ幅が大きい

前述した、住信SBIネット銀行の住宅ローンの場合

2017年8月時点

基準金利

  • 10年固定金利:2.360%

通期引下げプラン

  • 10年固定金利:1.060%
    (当初期間中の金利引き下げ:基準金利から-1.30%)
    (当初期間終了後の金利引き下げ:基準金利から-1.30%)

当初引下げプラン

  • 10年固定金利:0.660%
    (当初期間中の金利引き下げ:基準金利から-1.70%)
    (当初期間終了後の金利引き下げ:基準金利から-0.70%)
ほとんどの方が当初期間の金利が変動金利並みに低金利の「当初引下げプラン」を選ぶのです。
銀行も、見た目の金利が低金利で売りやすい「当初引下げプラン」を積極的に販売しています。

今回の試算は「当初引下げプラン」での試算です。

しかし、「当初引下げプラン」の場合

  • (当初期間中の金利引き下げ:基準金利から-1.70%
  • (当初期間終了後の金利引き下げ:基準金利から-0.70%

ですから

基準金利の変動とは関係ないところで「当初期間終了後は金利が1.0%上昇する」

ということを意味しています。

今回比較した「当初10年固定金利」と「変動金利」の金利推移をグラフで見てみると

5年目に金利1.0%上昇パターンの「当初10年固定金利」と「変動金利」の金利推移

年月 変動金利 変動金利の基準金利 当初10年固定金利 当初10年固定金利の基準金利
0年目 0.444% 2.775% 0.660% 2.360%
1年目 0.444% 2.775% 0.660% 2.360%
2年目 0.444% 2.775% 0.660% 2.360%
3年目 0.444% 2.775% 0.660% 2.360%
4年目 0.444% 2.775% 0.660% 2.360%
5年目 1.444% 3.775% 0.660% 3.360%
6年目 1.444% 3.775% 0.660% 3.360%
7年目 1.444% 3.775% 0.660% 3.360%
8年目 1.444% 3.775% 0.660% 3.360%
9年目 1.444% 3.775% 0.660% 3.360%
10年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
11年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
12年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
13年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
14年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
15年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
16年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
17年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
18年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
19年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
20年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
21年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
22年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
23年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
24年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
25年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
26年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
27年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
28年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
29年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
30年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
31年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
32年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
33年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
34年目 1.444% 3.775% 2.660% 3.360%
「当初10年固定金利」が「変動金利」よりも低金利になるのは、5年目に金利上昇したケースで10年目までの短い期間だけ

なのです。

concierge

返済期間35年のうちの5年間、7分の1の期間しか「当初10年固定金利」が有利になる期間はなく
残りの7分の6の期間は「変動金利」が低金利なのですから

金利がどう上昇したところで「変動金利」の方が総返済額が安くなるのは当然のこと

なのです。

concierge
  • 「当初10年固定金利」は「変動金利」よりも金利上昇リスクが少ない分、ベースの金利が高い
  • 「当初10年固定金利」は「変動金利」と「全期間固定金利」の中間にあるもの

というのは大きな間違えです。

当初10年固定金利の落とし穴を回避するためには?

当初10年固定金利の「通期引下げプラン」を選ぶ

当初10年固定金利の「通期引下げプラン」を選べば、当初10年が経過したとしても、基準金利からの引き下げ幅が変わりません。

この場合、金利が大幅に上昇したとしたら、「変動金利」よりも「当初10年固定金利」の方が総返済額が安くなる可能性があります。

当初10年固定金利なら10年後に借り替える

当初10年固定金利で、10年後に金利が大幅に上昇するのが問題なのですから、10年後に住宅ローンの借り換えをしてしまえば

  • 当初期間の10年間の低金利
  • 当初期間は固定金利で金利上昇なし

というメリットのみが享受できます。

これも、当初10年固定金利の落とし穴を回避する有効な選択肢です。

ただし、借り換えには借り換え時に諸費用が発生するので、その負担額も考慮する必要があります。

当初10年固定金利は選ばない!

一番単純な方法ですが

  • 金利上昇リスクを受け入れる「変動金利」
  • 金利上昇リスクを回避する「全期間固定金利」

の2つの選択肢に絞ってしまう方が、住宅ローンの金利タイプを選ぶ際には、シンプルで総返済額も安くできる可能性が高いのです。

今月の住宅ローン金利動向はこちら

まとめ

金利がどんな形で上昇したとしても

  • 当初10年固定金利より変動金利の方が金利上昇リスクは少ない
  • 当初10年固定金利より変動金利の方が総返済額が安い

ことがシミュレーション結果でも見て取れます。

理由は

当初10年固定金利は当初期間終了後に金利が大幅に上昇してしまうから

です。

当初10年固定金利の金利が変動金利よりも有利な期間が短いのです。

  • 「当初10年固定金利」は「変動金利」よりも金利上昇リスクが少ない分、ベースの金利が高い
  • 「当初10年固定金利」は「変動金利」と「全期間固定金利」の中間にあるもの

というのは大きな間違えです。

当初10年固定金利の落とし穴を回避する方法としては

  1. 当初10年固定金利の「通期引下げプラン」を選ぶ
  2. 当初10年固定金利なら10年後に借り替える
  3. 当初10年固定金利は選ばない!

というものがあります。

concierge

銀行は

「当初10年固定金利は、金利も変動金利並に低金利ですし、当初10年間は金利が一定なので全然変動金利よりお得ですよ。」

と営業してきますので騙されないようにしましょう。正しい知識を持って、自分で試算してみることをおすすめします。

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