と勘違いしている方も非常に多いようです。今回は、住宅ローンの当初10年固定金利の落とし穴について解説します。
当初10年固定金利より変動金利の方が金利上昇リスクは少ない!
論より証拠です。
まずは「当初10年固定金利」と「変動金利」を金利上昇パターンを変えて、総返済額をシミュレーションしてみます。
「当初10年固定金利」と「変動金利」の金利上昇局面の総返済額比較
検証した住宅ローン
住信SBIネット銀行
2017年8月時点金利
- 通期引下げプラン「変動金利」:0.444%
- 当初引下げプラン「10年固定金利」:0.660%
(当初期間中の金利引き下げ:基準金利から-1.70%)
(当初期間終了後の金利引き下げ:基準金利から-0.70%)
検証条件
- 借入額:3000万円
- 返済期間:35年
金利上昇検証パターン
- 金利変動なし
- 5年目金利0.5%上昇
- 5年目金利1.0%上昇
- 5年目金利1.5%上昇
- 5年目金利2.0%上昇
- 10年目金利0.5%上昇
- 10年目金利1.0%上昇
- 10年目金利1.5%上昇
- 10年目金利2.0%上昇
- 20年目金利0.5%上昇
- 20年目金利1.0%上昇
- 20年目金利1.5%上昇
- 20年目金利2.0%上昇
試算で利用した返済シミュレーション機能
返済シミュレーションツールはこちら
「変動金利」の総返済額
検証パターン | 変動金利 | |||
---|---|---|---|---|
借入時金利 | 上昇後金利 | 総返済額 | 毎月返済額(最大) | |
金利変動なし | 0.444% | 0.444% | 32,396,669 | 77,135 |
5年目金利0.5%上昇 | 0.444% | 0.944% | 34,486,685 | 82,941 |
5年目金利1.0%上昇 | 0.444% | 1.444% | 36,673,256 | 89,015 |
5年目金利1.5%上昇 | 0.444% | 1.944% | 38,955,281 | 95,354 |
5年目金利2.0%上昇 | 0.444% | 2.444% | 41,331,271 | 101,954 |
10年目金利0.5%上昇 | 0.444% | 0.944% | 33,848,928 | 81,976 |
10年目金利1.0%上昇 | 0.444% | 1.444% | 35,357,818 | 87,006 |
10年目金利1.5%上昇 | 0.444% | 1.944% | 36,922,901 | 92,223 |
10年目金利2.0%上昇 | 0.444% | 2.444% | 38,543,530 | 97,625 |
20年目金利0.5%上昇 | 0.444% | 0.944% | 32,920,538 | 80,046 |
20年目金利1.0%上昇 | 0.444% | 1.444% | 33,456,963 | 83,026 |
20年目金利1.5%上昇 | 0.444% | 1.944% | 34,005,890 | 86,075 |
20年目金利2.0%上昇 | 0.444% | 2.444% | 34,567,267 | 89,194 |
「当初10年固定金利」の総返済額
検証パターン | 当初10年固定金利 | |||
---|---|---|---|---|
借入時金利 | 10年目金利 | 総返済額 | 毎月返済額(最大) | |
金利変動なし | 0.660% | 1.660% | 37,975,689 | 90,152 |
5年目金利0.5%上昇 | 0.660% | 2.160% | 38,252,576 | 95,503 |
5年目金利1.0%上昇 | 0.660% | 2.660% | 39,913,837 | 101,041 |
5年目金利1.5%上昇 | 0.660% | 3.160% | 41,629,997 | 106,761 |
5年目金利2.0%上昇 | 0.660% | 3.660% | 43,400,132 | 112,662 |
10年目金利0.5%上昇 | 0.660% | 2.160% | 38,252,576 | 95,503 |
10年目金利1.0%上昇 | 0.660% | 2.660% | 39,913,837 | 101,041 |
10年目金利1.5%上昇 | 0.660% | 3.160% | 41,629,997 | 106,761 |
10年目金利2.0%上昇 | 0.660% | 3.660% | 43,400,132 | 112,662 |
20年目金利0.5%上昇 | 0.660% | 1.660% | 37,239,696 | 93,444 |
20年目金利1.0%上昇 | 0.660% | 1.660% | 37,845,519 | 96,809 |
20年目金利1.5%上昇 | 0.660% | 1.660% | 38,464,554 | 100,248 |
20年目金利2.0%上昇 | 0.660% | 1.660% | 39,096,690 | 103,760 |
「当初10年固定金利」と「変動金利」の総返済額比較
検証パターン | 変動金利 | 当初10年固定金利 | 比較 |
---|---|---|---|
総返済額 | 総返済額 | 差 | |
金利変動なし | 32,396,669 | 37,975,689 | +5,579,020円 |
5年目金利0.5%上昇 | 34,486,685 | 38,252,576 | +3,765,891円 |
5年目金利1.0%上昇 | 36,673,256 | 39,913,837 | +3,240,581円 |
5年目金利1.5%上昇 | 38,955,281 | 41,629,997 | +2,674,716円 |
5年目金利2.0%上昇 | 41,331,271 | 43,400,132 | +2,068,861円 |
10年目金利0.5%上昇 | 33,848,928 | 38,252,576 | +4,403,648円 |
10年目金利1.0%上昇 | 35,357,818 | 39,913,837 | +4,556,019円 |
10年目金利1.5%上昇 | 36,922,901 | 41,629,997 | +4,707,096円 |
10年目金利2.0%上昇 | 38,543,530 | 43,400,132 | +4,856,602円 |
20年目金利0.5%上昇 | 32,920,538 | 37,239,696 | +4,319,158円 |
20年目金利1.0%上昇 | 33,456,963 | 37,845,519 | +4,388,556円 |
20年目金利1.5%上昇 | 34,005,890 | 38,464,554 | +4,458,664円 |
20年目金利2.0%上昇 | 34,567,267 | 39,096,690 | +4,529,423円 |
結果
少なくとも、前述したどの金利上昇パターンでも、
- 金利変動なし:「変動金利」の方が総返済額が安い
- 5年目金利0.5%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
- 5年目金利1.0%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
- 5年目金利1.5%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
- 5年目金利2.0%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
- 10年目金利0.5%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
- 10年目金利1.0%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
- 10年目金利1.5%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
- 10年目金利2.0%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
- 20年目金利0.5%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
- 20年目金利1.0%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
- 20年目金利1.5%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
- 20年目金利2.0%上昇:「変動金利」の方が総返済額が安い
という結果なのです。
しかも、10年目以降の金利上昇の場合は、金利上昇率が増えれば増えるほど「当初10年固定金利」の方が総返済額が高くなってしまっているので
- 10年目金利0.5%上昇:+4,403,648円
- 10年目金利1.0%上昇:+4,556,019円
- 10年目金利1.5%上昇:+4,707,096円
- 10年目金利2.0%上昇:+4,856,602円
- 20年目金利0.5%上昇:+4,319,158円
- 20年目金利1.0%上昇:+4,388,556円
- 20年目金利1.5%上昇:+4,458,664円
- 20年目金利2.0%上昇:+4,529,423円
この2つの住宅ローンの場合は
どんな形で金利が上昇したとしても
「変動金利」の方が総返済額が安くなる
= 「変動金利」の方が「当初10年固定金利」よりも金利上昇リスクが少ない
という結果になっているのです。
ただし、5年目の金利上昇は金利上昇率の増加に伴い微減しているので
- 5年目金利0.5%上昇:+3,765,891円
- 5年目金利1.0%上昇:+3,240,581円
- 5年目金利1.5%上昇:+2,674,716円
- 5年目金利2.0%上昇:+2,068,861円
その理由を解説します。
当初10年固定金利より変動金利の方が金利上昇リスクは少ない理由
理由は「当初10年固定金利の当初期間終了後の金利」にあります。
当初固定金利は大きく分けて2種類の金利タイプがあります。
- 通期引下げプラン:当初期間も、当初期間終了後も、基準金利からの引き下げ幅が変わらない
- 当初引下げプラン:当初期間は、当初期間終了後も、基準金利からの引き下げ幅が大きい
前述した、住信SBIネット銀行の住宅ローンの場合
2017年8月時点
基準金利
- 10年固定金利:2.360%
通期引下げプラン
- 10年固定金利:1.060%
(当初期間中の金利引き下げ:基準金利から-1.30%)
(当初期間終了後の金利引き下げ:基準金利から-1.30%)
当初引下げプラン
- 10年固定金利:0.660%
(当初期間中の金利引き下げ:基準金利から-1.70%)
(当初期間終了後の金利引き下げ:基準金利から-0.70%)
銀行も、見た目の金利が低金利で売りやすい「当初引下げプラン」を積極的に販売しています。
今回の試算は「当初引下げプラン」での試算です。
しかし、「当初引下げプラン」の場合
- (当初期間中の金利引き下げ:基準金利から-1.70%)
- (当初期間終了後の金利引き下げ:基準金利から-0.70%)
ですから
基準金利の変動とは関係ないところで「当初期間終了後は金利が1.0%上昇する」
ということを意味しています。
今回比較した「当初10年固定金利」と「変動金利」の金利推移をグラフで見てみると
5年目に金利1.0%上昇パターンの「当初10年固定金利」と「変動金利」の金利推移
年月 | 変動金利 | 変動金利の基準金利 | 当初10年固定金利 | 当初10年固定金利の基準金利 |
---|---|---|---|---|
0年目 | 0.444% | 2.775% | 0.660% | 2.360% |
1年目 | 0.444% | 2.775% | 0.660% | 2.360% |
2年目 | 0.444% | 2.775% | 0.660% | 2.360% |
3年目 | 0.444% | 2.775% | 0.660% | 2.360% |
4年目 | 0.444% | 2.775% | 0.660% | 2.360% |
5年目 | 1.444% | 3.775% | 0.660% | 3.360% |
6年目 | 1.444% | 3.775% | 0.660% | 3.360% |
7年目 | 1.444% | 3.775% | 0.660% | 3.360% |
8年目 | 1.444% | 3.775% | 0.660% | 3.360% |
9年目 | 1.444% | 3.775% | 0.660% | 3.360% |
10年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
11年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
12年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
13年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
14年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
15年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
16年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
17年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
18年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
19年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
20年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
21年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
22年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
23年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
24年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
25年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
26年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
27年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
28年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
29年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
30年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
31年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
32年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
33年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
34年目 | 1.444% | 3.775% | 2.660% | 3.360% |
なのです。
返済期間35年のうちの5年間、7分の1の期間しか「当初10年固定金利」が有利になる期間はなく
残りの7分の6の期間は「変動金利」が低金利なのですから
なのです。
- 「当初10年固定金利」は「変動金利」よりも金利上昇リスクが少ない分、ベースの金利が高い
- 「当初10年固定金利」は「変動金利」と「全期間固定金利」の中間にあるもの
というのは大きな間違えです。
当初10年固定金利の落とし穴を回避するためには?
当初10年固定金利の「通期引下げプラン」を選ぶ
当初10年固定金利の「通期引下げプラン」を選べば、当初10年が経過したとしても、基準金利からの引き下げ幅が変わりません。
この場合、金利が大幅に上昇したとしたら、「変動金利」よりも「当初10年固定金利」の方が総返済額が安くなる可能性があります。
当初10年固定金利なら10年後に借り替える
当初10年固定金利で、10年後に金利が大幅に上昇するのが問題なのですから、10年後に住宅ローンの借り換えをしてしまえば
- 当初期間の10年間の低金利
- 当初期間は固定金利で金利上昇なし
というメリットのみが享受できます。
これも、当初10年固定金利の落とし穴を回避する有効な選択肢です。
ただし、借り換えには借り換え時に諸費用が発生するので、その負担額も考慮する必要があります。
当初10年固定金利は選ばない!
一番単純な方法ですが
- 金利上昇リスクを受け入れる「変動金利」
- 金利上昇リスクを回避する「全期間固定金利」
の2つの選択肢に絞ってしまう方が、住宅ローンの金利タイプを選ぶ際には、シンプルで総返済額も安くできる可能性が高いのです。
今月の住宅ローン金利動向はこちら
まとめ
金利がどんな形で上昇したとしても
- 当初10年固定金利より変動金利の方が金利上昇リスクは少ない
- 当初10年固定金利より変動金利の方が総返済額が安い
ことがシミュレーション結果でも見て取れます。
理由は
です。
当初10年固定金利の金利が変動金利よりも有利な期間が短いのです。
- 「当初10年固定金利」は「変動金利」よりも金利上昇リスクが少ない分、ベースの金利が高い
- 「当初10年固定金利」は「変動金利」と「全期間固定金利」の中間にあるもの
というのは大きな間違えです。
当初10年固定金利の落とし穴を回避する方法としては
- 当初10年固定金利の「通期引下げプラン」を選ぶ
- 当初10年固定金利なら10年後に借り替える
- 当初10年固定金利は選ばない!
というものがあります。
銀行は
「当初10年固定金利は、金利も変動金利並に低金利ですし、当初10年間は金利が一定なので全然変動金利よりお得ですよ。」
と営業してきますので騙されないようにしましょう。正しい知識を持って、自分で試算してみることをおすすめします。
返済シミュレーションツールはこちら
「全期間固定金利は金利上昇リスクがないけど、変動金利は怖い。」
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